どーも、元銀行員のおしのです。

銀行員時代にかなりの方から質問を受けていた、タイトルにもある話について今回は書いていきたいと思います。
タイトルで10年固定、35年固定という書き方をしましたが、一定期間固定金利vs全期間固定金利と読み替えてもらって大丈夫です。

前提として簡単に説明しておきますと、
一定期間固定金利は、例えば返済期間35年で住宅ローンを組んだ時に、「その中の一定期間だけ(10年なら10年)固定金利で組み、一定期間が過ぎればまた変動金利もしくは固定金利を再選択する必要がある金利」のことです。
これに対し全期間固定金利は、同じように返済期間35年で住宅ローンを組んだ時、35年間丸々固定金利で組み、「住宅ローンの契約時から最終返済日まで、契約時に設定した適用金利から一切変動しない金利」のことです。住宅金融支援機構という機関と銀行などの金融機関が提携して行っているフラット35などもこの全期間固定金利に入ります。

ちなみに一定期間固定金利には10年固定の他にも5年固定や3年固定などがあり、全期間固定金利には35年固定の他に25年固定(返済期間25年)や20年固定(返済期間20年)があります。

一定期間固定金利のメリット

①一定期間終了時に、当初契約した時よりも住宅ローン金利(基準金利)が下がっていれば低い金利で組み直すことが出来る

一定期間固定の場合は固定期間終了するときに再度金利の再選択を行う必要があります。
金利の再選択時に、前回10年固定で組んだ時の金利よりも下がっていれば、低い金利で再選択をすることが出来ます。

例えば、

平成19年2月に住宅ローン35年返済で10年固定金利を選択して契約。10年固定金利は2%が適用。
平成29年1月に10年固定終了。金利の再選択で10年固定を選択したところ、この10年間で金利が下がっていたようで、10年固定金利が1.0%で組み直すことが出来た。

こういった場合、全期間固定金利を当初選択していた場合、途中で金利の変更が出来ないので、ずっと高い金利で組んだままということになりますが、一定期間固定金利の場合、金利の低下に伴う恩恵を受けることが出来ます。

②全期間固定金利に比べて金利が低い

全期間固定金利に比べて固定期間が短くなり、金利上昇のリスクを取る分、適用される金利は低くなります。

③固定期間終了時に変動金利や全期間固定金利にも変更できる

これもメリットの一つとして挙げておきます。一定固定期間終了(金利切替)のタイミングで変動金利や全期間固定金利、他の一定期間固定金利にも変更できます。

全期間固定金利のメリット

ローンを契約してから完済するまで、金利上昇の心配をする必要が一切ない

全期間固定金利の一番のメリットは何と言ってもこれに尽きます。
住宅ローンを組む上で皆さんが気にするのは、いかに低い金利でローンを組んでいられるかということです。
変動金利や一定期間固定金利を選んだ場合、もし金利がグングン上がってしまった場合が怖いので、多少金利が高くついても安心料として、35年固定金利などの全期間固定金利を選ぶ、というのが大体のパターンです。

一定期間固定金利のデメリット

①一定期間終了後に金利が上昇していた場合は高い金利で組み直すことになる

一定期間固定金利は一定期間の間は、どれだけ金利が上昇しても影響は受けませんが、一定期間が終了した時にちょうど金利が上昇して高いタイミングであれば、高い金利で組み直さなければいけないということになります。

②一定期間固定金利の落とし穴に注意

一定期間固定金利の落とし穴については別記事で詳しく話しているので是非目を通していただきたいんですが、簡単に言うと

「一定期間が終了した後に変動金利を選ぶにしろ、再び固定金利を選ぶにしろ高い金利で組み直さなければいけないケースが多い」

ということです。
ここで、「ん?それってさっきのデメリット①で話してた一定期間終了時に金利が上がってた場合の話だよね?」と思う方もいると思いますが、その場合とはまた別です。
このデメリット②でいう、高い金利で組み直さなければいけない場合というのは、

「契約の内容自体が、一定期間終了後は金利が上がるという内容になっている」
場合です。

これってかなりの方がこの落とし穴に引っかかります。銀行員時代どれほど落とし穴に引っかかった人を見たか分かりません。
そして、「そんなの知らなかった!どうにかしろ!」と銀行員に怒り出す人も多かったです。
銀行員に当たり散らして解決すればいいんですが、悲しいことにその契約内容で10年前にハンコを押しているので法律的にも知らなかったで覆せる話ではないんですよね。結局、金利が高いから他行に借換せざるを得なくなって余計な費用と手間暇がかかるという人たちをどれだけ見てきたかという感じです。
幸い、私が担当できたお客さんにはしつこいくらい言っていたんですが、担当によっては一回サラッと内容を話して終わる人もいるんですよね。というかそういう人は多いです。

住宅ローンの契約ってうちの銀行の場合ですが、最低でも1時間は見ておかなければいけません。
契約に時間をかけすぎると、他に営業をしたり事務をしたりする時間が減るので、サクッと契約を終わらせていく人がたくさんいます。
悲しいことに銀行の場合、仕事が出来る人は大体そういう人です。そして、銀行の場合大体3年以内に転勤するので、ちょっと問題が起きても「担当がすでに転勤してしまっておりまして」で通せるんですよね。
そういう銀行のスタイルが大嫌いで、上司と度々衝突していたのも、僕が銀行を辞めることになった一つの原因ですね。

すみません、話がそれてしまいましたが、落とし穴である
「契約の内容自体が、一定期間終了後は金利が上がるという内容になっている」
というのをイメージを持ってもらえるように例を用いて話します。

AさんはB銀行で当初10年固定を1.5%で組みました。
10年経ったので金利の再選択のためB銀行に行きました。
B銀行の住宅ローンの金利のチラシをみると10年固定の金利は現在1%だと記載されています。
Aさんは10年固定を選択すると1.0%で組めると思いローンの窓口に相談します。
ローンの担当からは、「このチラシに書いてあるのは住宅ローンを新しく組む人が、最初の10年間だけ通常よりも安い特別金利が適用できるものです。しかし、10年固定期間終了した後は、どの金利を選択しても最初の10年のような特別金利は適用できないので、金利は上がります。なのでこのチラシに書かれてある10年固定金利1%というのは、新しく住宅ローンを組む人が最初の10年間だけに適用される特別金利ということです。Aさんは10年固定が終了しているのでこの1%の特別金利では組めません。Aさんの場合、再度10年固定を選択すると2%で組むことになります。」と言われます。
Aさんは「えっ!」と思いチラシを見ると確かに小さく書かれている…

といった感じですね。

これほんとに痛い目見ます。こちらの記事により詳しく書いているので是非目を通してもらいたいです。
変動金利と固定金利はどっちがいいの?【元銀行員解説】

全期間固定金利のデメリット

①一定期間固定金利に比べて金利が高い

これは仕方ないですね。金利上昇のリスクを一切考慮する必要がなくなるので当然その為の安全料として、金利は他よりも高いです。

②途中で金利の変更が出来ない

もし契約をした当初よりも住宅ローンの金利がドンドン下がっていった場合でも、金利の変更は出来ません。
契約内容でも途中で金利の変更は出来ない旨がかならず記載されていて、そこにハンコを押すことになります。
まあ、金利上昇のリスクを抑える為に全期間固定金利で組んでいて、金利が下がったから全期間固定金利をやめて低い金利で組み直したい、というのは気持ちは分かりますが、普通に考えて都合が良すぎる話ですよね。そもそも途中で金利変更できないと承諾してハンコ押して契約している訳なので。そんなことを公で認めていたら銀行側としても商売あがったりなんですよね。
まあ、という大前提をしっかり話したところで正直なところ抜け道があるんですけどね。笑
別記事で詳しく書きたいと思います。

ぶっちゃけどっちがいいの?

はい、ここまでそれぞれのメリットデメリットについて話してきましたが、皆さんが知りたいのはぶっちゃけどっちがいいの?って話ですよね。
私は毎回おなじみで言ってますが、変動金利にしろ一定期間固定金利にしろ全期間固定金利にしろ、どれを選ぶのが一番正解とかそういうのはありません。それぞれにプラスな面もあってマイナスな面もあります。
ただ、それでも私が固定金利で選ぶとしたら

「全期間固定金利」
を選びます。

これは正直、消去法で選んだ感じですね。私はそもそも変動金利が良いと思っていますので。笑
なんで全期間固定金利を選んだかというと、例えば35年の返済期間で住宅ローンを組むとして、一定期間固定金利の場合、固定金利である期間がたったの10年位です。(15年とかもありますが)
10年固定期間中に住宅ローン金利が上がった場合、10年間は影響を受けませんが、10年終了したらどっちみち高い金利で組み直す必要が出てきます。
もし、それがちょうど子供が生まれてお金がかかるようになっただとか、当初想定していなかったことなどでお金が必要になる時期と被ってしまったら、家計が大変になってしまうことも考えられます。
それなら最初からそのリスクを抑えた全期間固定金利で組み、金利上昇のリスクを一切回避しておいた方が、途中で返済額が上がることも無いので、家計のやりくりもしやすいです。

「確かに金利上昇のリスクは避けられるけど、金利が下がっていった場合、一定期間固定金利なら期間が終了した時にその恩恵が受けられるよね。」と考える人ももちろんいます。
ただ金利が下がることを期待するなら、最初から変動金利にした方がいいと思います。
変動金利が一番金利は低いですし、基本的に金利が下がった時に最も恩恵を受けられるのも変動金利です。
変動金利は金利上昇した時が怖いと言う人はいますが、金利が上昇した場合、先ほど言ったようにどっちみち一定期間固定金利も影響を受けることが多いです。先ほどの落とし穴にかかっていたらもう二重に金利が上がり、目も当てられません。(この記事を読んでいる方は恐らくその点は大丈夫だと思いますが。)

低い金利の恩恵を感じたいなら変動金利
金利上昇のリスクを抑えたいなら全期間固定金利

そんな感じかなと思います。
今回は固定金利の中で比べたときの話をしていますが、固定金利と変動金利を比べた記事も書いていますので、そちらにも是非目を通してみてください。
(参考リンク:変動金利と固定金利はどっちがいいの?