どーも、元銀行員のおしのです。

一時話題になりましたマイナス金利ですが、銀行に勤めていたころもお客さんは、マイナス金利が何なのか、マイナス金利が住宅ローン金利にどう影響するか、についてよく知らない方がほとんどでした。
「マイナス金利になるととりあえず住宅ローン金利って下がるんでしょ?」といった何となくでしか理解していない方が多いので、今回はできるだけ初心者向けに分かりやすくマイナス金利が住宅ローンもたらす影響について話します。

では、早速いきましょう。

そもそもマイナス金利って何?

マイナス金利というのは、日銀が行う金融緩和政策の1つです。
金融緩和というのは、簡単に言うと「もっとお金を世の中にばらまいていこう」という政策です。
正しく言い換えると、銀行がもっと企業や個人にお金を貸して、それによってもっと国民がお金を使い(消費してもらい)、経済を潤そうという政策です。

例えば、住宅ローンの金利が下がると、住宅購入を検討する人が増えます。
住宅の購入が増えれば、それだけ経済は潤って景気はよくなるということです。

現在、日本銀行は、インフレーション2%を目標に金融緩和政策を行っています。
インフレ-ション2%を目標にするというのは、物価を2%上げようという意味です。

今の日本のようなデフレーション(物価が低く、円の価値が高い)の状態では経済にとってマイナスです。
物価が低いと、物が安く買えるから嬉しいと考える人もいると思います。しかし、物価が低ければそれだけ企業にとっては基本的に売上が下がるということです。
ライバル会社のA社が商品の価格を下げたからこちらも価格を下げざるを得ない、となったらそれまでと同じ数だけ商品が売れたとしても、会社としての売上は下がりますよね。

会社の売上が下がるとそれだけ会社にとっては利益が減るということになるので、給料やボーナスが増額できなかったり、最悪の場合はボーナスカット、給料減免、リストラなども行われます。
給料が満足にもらえなければ、多くの人はますますお金をあまり使いたがらなくなりますよね、そのため高い商品は避けてさらに安い商品を求めていく、という思考になってしまいます。

このような悪循環のことを、専門用語で「デフレスパイラル」と言います。

日本銀行は、このデフレーションを脱却して、物価を上げて景気を良くしていこうと考えています。
そのためマイナス金利を始めとした金融緩和(お金を市場にばらまいていく)をやることにより、個人・企業の消費が増えて物価が上昇することを狙っています。

分かりやすくイメージを持ってもらうように話すと、

5000万円の物件を5人の人が欲しいと思うとします。
しかし、5人のうち4人は住宅ローンの金利が高いので住宅購入を断念します。
そうすると残った1人がその物件を購入することになります。

これに対して金融緩和政策によって住宅ローンの金利が下がることにより、5人全員がその5000万円の物件を購入できる状態になった時、住宅業者はその物件の価格を上げることによって購入者を絞ることができます。
つまり金融緩和(お金の市場へのばらまき)によって、物件の価格が上がった、言い換えるとインフレ-ションが起きたということです。

改めて言うと日銀は現在、金融緩和によってこういったインフレ-ション2%を達成しようとしています。
そしてマイナス金利はその金融緩和政策の一つということです。

マイナス金利って何の金利がマイナスになるの?

マイナス金利がニュースで流れた時、多くの人が、自分が銀行に預けているお金に対する金利がマイナスになり、自分の銀行の預金がどんどん減っていくという様に考えました。
ただ実際は、皆さんが銀行に預けている預金の金利がマイナスになるんじゃなくて、市中銀行(みなさんが普段利用している銀行の総称)が日本銀行に預けている預金に対する金利がマイナスになる、ということになります。

日本銀行は、「銀行の銀行」という役割を持っています。
これは、日本銀行が市中銀行からお金を預かることができる、という役割です。

今までは、日本銀行に対して市中銀行が預けていたお金には、みなさんが普段銀行に預ける預金のように、金利が付いていました。
そのため、多くの資金を日本銀行に預けて、その預金の利息で確実な利益を出していく銀行がたくさんありました。
日本銀行に預けておけば、確実に利息が取れるため、貸し倒れのリスクのあるような企業や個人には融資するよりも、日本銀行に預けた預金で確実な利益を取っていこうという考え方です。

確かにこれは市中銀行にとっては、リスクを取らずに確実に利益を出すことができる方法ですよね。
しかし、銀行がこのように貸し渋り(貸し倒れのリスクがあるからあまりお金を貸したくない)を行えば、企業や個人にとっては、資金が得られないため、お金を使うことができず消費はストップしてしまいます。
結果として、消費がストップすればモノやサービスが売れない訳ですから、企業は利益を伸ばすことができませんし、景気はよくなりません。

そのため、市中銀行がそのように、日本銀行にお金を預けることでリスクを取らずに利益を出すことを止めるために、日本銀行は市中銀行が預ける預金に対する金利を「マイナスの金利」にして、日本銀行に預ければ預けるほど資産が減っていく政策を取った訳です。

市中銀行は、今まで通り日本銀行に預けて利益を出すことは出来なくなった訳なので、別の方法で利益を出さざるを得ない、つまり、企業や個人にお金を貸して利益を出していかざるを得なくなったのです。
市中銀行は従来のように貸し渋りを行っていれば、利益を出せない訳なので、もっと企業や個人が銀行からお金を借りやすい状況を作る必要があります。
その一つとして「融資金利を下げる」ことで、企業や個人がお金を借りやすくなった、ということです。

これが、マイナス金利によって、住宅ローンを含む色んな貸出金利が下がった理由です。

なんとなくイメージをつかんでもらえたら幸いです。

ただし、あくまでマイナス金利はインフレ2%を達成するために現在行われているだけで、すぐに撤廃される可能性もある

注意してほしいのは、マイナス金利はこれからずっと行われる訳ではなく、すぐに撤廃される可能性もあるということです。
当然と言えば当然ですが、日本が徐々にインフレになってきた、景気が良くなってきたと日銀が判断すれば、マイナス金利は撤廃されます。

過度なインフレや景気が過熱しすぎるのを防ぐためです。
そうなると今度は、金融緩和から今度は金融引き締め政策(銀行からお金を借りにくくする)に変わります。

簡単に言うとまた銀行は貸出金利を上げることで、企業や個人がお金を借りにくくするということになります。
この状態になると、物価が2%(インフレ2%)上がるわ、住宅ローン金利は上がるわで現在の状況に比べると、かなり借りにくい状況になると考えられます。

3000万円で買えた物件が物価2%上がると、3060万円でしか買えなくなりますし、現在よりも住宅ローン金利が上がることにより、何十万円、何百万円と支払う利息が増えることになります。

正直これまでの歴史で、今以上に住宅ローンが組みやすい、住宅が購入しやすい時代は無いと思います。
それくらい住宅を購入するなら今しかないという感じです。
消費税増税(2019年10月)や、オリンピックによる地価の上昇や景気の上昇(インフレ、金融引き締め懸念)といった住宅購入者にとってはマイナスなイベントも控えていますしね。
これから何年かで住宅ローン金利が上がることはあっても、今以上に下がることは無いと思います。

さいごに(おしののひとこと)

以上、マイナス金利と住宅ローンの関係について話してきました。
何となくでもイメージがつかめたら大丈夫です。

先ほども話したように、今後金利は上昇する可能性は十分ありますし、住宅購入者にとってマイナスなイベントも控えていますので、現在検討中の方はできるだけ早い段階で動いておくことをオススメします。

是非参考にしてみてください。